「Trick or Treat!」





                                    Play a Trick





………



「…は?」


執務室のドアに手を掛けた瞬間出てきた、明らかに自分よりいくつか年上の人間が正々堂々と胸を張って手を突き出した。
そしてそのまま、ずるずると執務室へ連れ込みソファに座らせる。

出た言葉がどんな罵倒でもなく、間の抜けたこの声だったとしても誰が、エドワードを責められよう?

目の前のこの人間は、自分より一回り以上年上で当たり前だが世間一般的に大人と認められるのである。


「あんた、ほんとに大人?」
「ほほう。子供と大人の境界線とはどこだね?」

はん、と鼻を鳴らしてさも自分が正しいかのようなこの態度。
本当に国軍大佐なのか?ナニカの間違いではないのか?
ガキに菓子をねだる大人が何処にいるんだ…。
今日がハローウィンである事はエドだってわかっている。
一年ぶりのジャックが到る所にぶら下がっているのだ、それに仮装パレードの子供達がたくさん公園に集まっていた。
賑やかなのは嫌いじゃない。
店先を通る度に気のいいおじさんおばさんが菓子を配っていて、エドワードもいつの間にかポケットいっぱいにキャンディーにクッキー、チョコレートをもらっていたのだ。 

「さあ?」

境界線どころか、この男…。
突き出したこの手からしていかがわしい。
なんなのだろう。この、あやしくカモンカモンと滑らかに動く指は?


「…ほれ?」

ため息を一つ落として、エドワードが投げてよこしたのは可愛らしい包装紙に包まれたキャンディー。

「おや、持っていたのか。残念、正々堂々と悪戯できると思ったのだがねえ」


駄目な大人は、ほおってよこされたキャンディーに一瞬目をすがめ、そして指でもてあそんだ後口に運んだ。
ほっとするような、懐かしいようなそんな甘さが口いっぱいに広がる。
これはこれで、少しは満足かもしれない。

最愛のエドワードもいることだし。


そして、エドワードはというとニヤニヤと笑っていた。




「なあ、大佐」
「んー?」


「Trick or Treat!」


にこりと手を突き出した。

意表を付かれたのはロイ。なるほどと思う
確かにエドワードが菓子をねだるのは未だ許容範囲だ。
というか、エドになら何を強請られたって……

(………)

そして、少し考える。
そしてポケットに手を入れ、コートの中身とデスクの中身を思い出す。

「さあ、たいさ〜」

ニコニコと楽しそうなエドワードは何処から出したのか、既に巷で噂の極太マッキーを片手に悪戯決行意欲に燃えている。
ちょっと後退してしまうのは致し方ない。
あれに掛かれば最期、今日は1日他の誰かに対面できる顔ではいられない。

「よし。エドワード」

ちょいちょい、とデスクに腰掛けたままエドワードを引き寄せるロイ。
キュポンと、マジックの蓋を抜く音がしたのと、エドの頤が救われたのはほぼ同時。
何が起こったのか理解するより早く、意識がぼやける。

―――――甘く溶ける

ちゅっと、余韻のような音を残して、ぼんやりと見上げると離れてゆく端正な大人の顔…。


ころんと、舌の上に残されたのは大分小さくなったキャンディー。





Happy Halloween




悪戯成功?




                                   Let’s Hereafter!!!

偶には私だって可愛い話が書きたいZo! σ(・ω<) <いっぱいいっぱいの模様
微妙だけど、小噺ってことで!今日中にアップできてよかった…
よーし、いってよしv
因みに大佐のデスクには、お菓子の袋が準備されています…。


BGMは可愛らしく、某ゲームF●の『モ●グリのテーマ』オルゴール調