+ +  Shout it loud












「ああ、ちょっと待ってくれ」

入り口から此方を伺っている部下に一声掛けて、そっと、窓辺に歩み寄る。
秋の高い空はもう重く濁った色の雲が厚くひしめき合っていた。
もうすぐ、白い結晶が舞い降りるのだろうか―――。

何もすることもなく、ただぼんやりと外を見つめて過ごした無為の日々は思い返せば短く、渦中にあっては地獄のように長かった。
生きていることが信じられず。
けれど、死というにはあまりにも軽薄。
ただ、目の前のものがもう無いということがこれほど軽く、そしてまた苦しい物かと思った。
そして、その中で
部下の口から重く零れ落ちた、最愛の少年のこと。

残された、廃墟の街。
静かで弔う者もない忘れ去られた都。
何もないその場所と、取り戻した少年が一人。

一人だけ

何故だろうか。
その絶望的ともいえる状況を、凪いだ心で受け止められたのは。
確かに分かっていたからかも知れない。
なぜだと言われても、答えようがない。
ただ、信じているからだと

そう、こたえるだけ



そして思い出す。
いつも走っていた彼等を。
前だけを見据え、止まることなく、回る世界に駆け出してゆくその姿―――

だから、留まってはいられない。


「私だけが、一人こんなところでもたもたしているわけには、いかないだろう?」

空を見上げて、冷たい風が吹き込む窓を開けて誰にともなく語る。

「だから、行くよ。待たない」

もともと、待つだけなど性に合わない

――君だってそうだろう?


今日も、今もどこかできっとあがいている君を想う。
必ず、ここへ帰っておいで。
君の場所はそこじゃない
ここに、ある。

弟の傍ではなく、故郷でもなく
ただ此処を選ぶと、そう約束した言葉は嘘ではないだろう?
ならば、帰って来い―――
此処へ

そして、今度こそこの背だけをまっすぐ見て、追って来い。



「待たせたな。行こう」

握り締めた拳を胸に当て、伏せていた瞳を開いて振り返る。
そして、目を見た瞬間に部下達が敬礼する。

だから、止まらない。
走り出す。















回る世界に駆けてく Yourdream  駆けてくYourdream

止まることなく 君は走る 君は走る 


朝焼けの街  見下ろす時 この一時

鮮やかなる日  君と走る 君と走る


By. Scudelia Eleutro







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