+ + Crystal note 遠く、静かに雨が落ちる音がする――― ふっと、突然意識が引き戻される。 窓枠に掛けていた腕をさすりながら、ロイは自嘲めいた笑みを口元に浮かべる。 どうやら知らず転寝をしていたらしいが、幸いな事にそれを見咎める者は今ここにはいない。 朝から降り続く雨が、薄い硝子を伝って流れてゆく。 昼もとうにすぎた時間だというのに、厚い雲が覆う空は暗いくて重い。 もう癖になってしまったようで、無意識に片側だけ伸ばした前髪に触れながら、その雨粒を追っていたロイは椅子に浅く掛け直し書き物の途中であったことを思い出したように、デスクに目線を移した。 けれど、身体は動かない。 溜息だけが悪戯に零れてゆく。 そう、深く息を吐き出すとその瞬間胸に凝固まった何かも吐き出してしまえたような気がしたが、それも一瞬 今だ重いものが胸をふさぐ。 「我ながら…女々しいな」 結局いつものように今日も、独り答えの出ない問いに呑まれる。 カチカチと遠く時計の音だけが意識を繋いでいた。 けれど、流れる時の速さなんて解らない。 「……そろそろ帰ってきたまえよ…」 誰とは言わない けれど――― 雨は上がらない 金色の太陽を未だ隠したまま |